80年以上前の作品とは思えぬが
今日はとある業界のシンポジウムのようなものに参加したのだが、
まあ、相変わらず残念な内容で、とにかく宣伝中心でクソだった。
受ける側の私の感覚がダメなのかもしれないが、他に参加していた知人も
「相変わらずだね」と言っていたのでお察しだろう。
これでレポートを書けといわれてもな……板書のコピペになってしまうのが残念だ。
その待ち時間の合間に、図書館で借りた『孤島の鬼』/江戸川乱歩、読了。
昔読んだと思っていたけれど他の本と勘違いしていたみたい……、
こんな強烈な内容忘れるはずがないわ。
今読むとトリックとかはすごいとは思わないけれど、当時は斬新だっただろうし、
これだけ「かたわ」という表現が多用されているのもすごい。
今、新刊で出るんだったら表現規制にひっかかるんじゃなかろうか、というほど
一生分の「かたわ」って言葉を目にした。ゲシュタルト崩壊しかけた。
そして何よりすごいのは性慾倒錯者だのなんだの言われる、
探偵役にして悲劇のヒーロー・諸戸の不憫さである。
語り手に対して同性愛の愛情を注ぎ、愛おしさのあまり語り手の婚約者に対して
求婚をして邪魔しようとしたり、2人きりの緊迫した状況で告白するという
お前どこのBLだよと思うようなまねをしている。というか微妙に行為に及んでいる。
火のように燃えた頬が、私の恐怖に汗ばんだ頬の上に重なった。
ハッハッという犬のような呼吸、一種異様の体臭、そして、ヌメヌメと滑かな、
熱い粘膜が、私の唇を捜して、蛭のように、顔中を這いまわった。
だのに、最後は語り手は結婚しました、あの人は病で倒れました、
最後まであなたの名前を呼んでいました……って哀れすぎるだろ!
語り手が無防備なくせに最後までやらせないカマトトに思えてしかたがなかった。
ミステリー、奇怪なストーリーより、諸戸の心情に憐れみを覚えた作品だった。