2015年 マイベスト本5
年末が急に忙しくなって久しぶりの更新で唐突にはじめるが、今年のまとめ。
私が今年読んだ本であって今年出版された本とは限らない。
続き物で完結していないものも基本的に除外している。
■非BL小説
非BL小説はどれも甲乙つけがたいものがあるので順不同。
- 銀河英雄伝説/田中芳樹
今年、SFに足を踏み入れるきっかけになったシリーズ。
スペースオペラとしての戦争も、両陣営のキャラクターの多彩さも楽しい。
本編10冊、外伝5冊の計15冊を読みきっても物足りなくて、
2ヶ月かけてOVAを見まくったのもいい思い出。 -
あなたの人生の物語/テッド・チャン
「バーナード嬢曰く。」でたった1冊しか出版していないけれど
珠玉のSF短編集があると知り、上記のSF熱により読んでみたが、
ガチSFを読むのが初めてと言ってもいいので、理解が追いつかないだとか
読みづらいだとか色々あったが、それでも圧倒された。詳細はこちら。
今のところ図書館で借りてその後自分で買い直したSFはこれだけ。 -
ハーモニー/伊藤計劃
さらにSFつながりで話題の伊藤計劃に手を出したがまあこれも面白い。
「虐殺器官」「屍者の帝国」ではなくハーモニーを選んだのはその実験的な
文体にも惹かれたからだが、3冊とも読んでそれぞれの繋がりを味わうと
また格別のものがある。詳細はこちら。
つくづくSFの思考実験の広さには恐れ入った。 -
美味礼讃/海老沢泰久
突然SFから美食へ。1つの出会いが信頼を生み、次の出会いへと繋がり、
そして人は信頼できるもののために動く。料理の細やかな描写も、
人々の機微も淡々としつつ染み入る。詳細はこちら。 - 図書館の魔女/高田大介
誰よりも雄弁だが唖者の図書館の魔女ことマツリカと、
彼女の手話通訳としてそばに控えるキリヒトを中心とした骨太ファンタジー。
「ことば」の本質を書誌学や言語学などを交えて問い続け、
読み手に「ことば」を伝えてくる。忙しい年末にこんな分厚くて
面白い本を読んでしまうだなんて、睡眠時間を削るしかないじゃないか!
上下巻あわせて1400ページ越え、(私にとっては)難解な単語も
ばんばん出てきてお世辞にも読みやすいとは言えないが、
こんなにページをめくる手が止まらないのも久しい。どっぷり嵌った。
続編も1冊出ていて、そちらもこの年末に読むつもり。
■BL小説
- ショートケーキの苺にはさわらないで/凪良ゆう
今年も凪良さんは良作を連発しまくったが中でもこれが一番よかった。
よかったというかもう号泣。旅先で読んでいたのだが、
電車の中で泣きすぎて傷心旅行みたいになってしまったほど。
ひどい扱いを受けているアンドロイドを助けた後、
仲が少しずつ深まっていくのだが、世間の状況がそれを許さずに
窮地に追い込まれていくという……あ、これもよく考えたらSFだな。
これ以上思い出すと泣いてしまうので止めるがぜひお勧めしたい1冊。 -
ヘブンノウズ/英田サキ
1巻・2巻が2012年、3巻が2013年4月とコンスタントに出て、
完結編の4巻はというと2014年12月、と長らく空いた作品。
昨年末に4巻を買って一気読み。それで合っていたと思う。
4巻で明らかになる内容が1年も置いといたら忘れてるわ……。
薀蓄だったりライトなサスペンスだったりがBLに収まりつつ、
それらがうまく融合していた良質なシリーズだった。 -
パブリックスクール/樋口美紗緒
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すみれびより/月村奎
不幸でネガティブな受のセンシティブな話といったら月村さん、と
言っていいのではないだろうか。代名詞である。
とはいえ、最近の傾向としてコメディ色が強いものも多い。
その中にもセンシティブさはあって、それはそれで好きなのだが、
どちらかといえば、昔からのセンシティブが前面に出ている作品が好き。
この作品は後者に属す。穏やかな中に胸を引き絞られるような痛みと、
それを包み込むようなやさしがとても良い。草間さんの挿絵もよく合っている。 - 恋してる、生きていく/夕映月子
登山ものBLといったら夕映さんと言っても過言ではない。
デビュー作の登山ものも非常によかったが、異なったアプローチで
山に関わる人を描いたこの作品もとてもよかった。詳細な感想はこちら。
その他、「ぼくはここにいる」「最強防衛男子!」「ここで待ってる」
「デートしようよ」「甘い毒」「シェイク・ミー・テンダー」などもよかった。
■BLコミック
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マザーズスピリット/エンゾウ
BLコミックは本当に絞るのが難しかったので幅が広くなるように並べてみた。
とはいえ、1位はもうこれ以外にない。
未開の地から来た異邦人を大学職員がお世話するというトンデモな設定だが、
異文化コミュニケーションの微笑ましさとギャグの切れが大変よかった。
言葉は通じないが、逞しく理知的で男前、褐色、年下、度量が大きい……
やばい、萌えツボである。AGFの小冊子めっさ読みてえ……。 -
よるとあさの歌/はらだ
ゲスい話と人物を書かせたら天下一品のはらださんがバンドもの!
それはクズいでしょうなあ、と楽しみにしていたが、ゲスい部分は
予想以上にゲスで、またそれを上回るラブの熱量がたまらなかった。
しかし、いったいドコから砂利入りのローションを尿道に流し込むなんて
色々と縮み上がることを仕入れてくるんでしょうね……余計な知識が、また1つ。
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課長、結婚しましょう!!/せいか
2015年オヤジ受大賞を差し上げたい、たいへんいいオヤジ受。
タイトルはすっとんきょうで中身もわりと弾けているが、
胸キュンさせるところはしっかりと押さえている。詳しい感想はこちら。 -
犬も喰わない/彩景でりこ
でりこさんの3人ものといえば「ストロベリーチョコバニラ」という
名作があるが、こちらも単なる2人のカップリングではなく、
間に誰かがいることで深まるトライアングルな関係。
ストロベリーチョコバニラと異なる点は、3人で致す場面はなく、
気持ちの上だけでの関係性を描いていること。
最終的には1つカップルに落ち着くが、そこまでの紆余曲折は、
直接的にしないことがかえって気持ちの深さを感じさせる。お見事です。 -
山田と少年/三田織
最後は清純枠。おっさん(というほどの年ではないが)と高校生が
つきあうようになるというだけの話なのだが、絵柄が可愛いことと、
おっさんに節度があるのと、高校生が非常にいい子すぎて、まぶしい……!
「新しいパンツを はいたばかりの正月元旦の朝」のようにさわやかなので
お正月に読んでさわやかな気分になるのも一興かもしれない。
「うちの神様にはがっかりだ!」「犬と欠け月」「相対的伊勢田くん」
「おはようおやすみまたあした」「あの日、制服で」「すずろ古書譚」
「しるされしアイ」なども非常に良い作品で悩んだし、続きものなら
「一生続けられない仕事3」「青い鳥より」「やぎさん郵便3」などもよかった。
山田ユギさんの新刊がまた読める日が来て嬉しい。
来年も良い作品が読めますように。