まさにKAGEROUのように
芸人のピース又吉(こう書くとイエス又吉っぽいな)が芥川賞を受賞した、ということで
にわかに盛り上がっていたが、そこで微妙に『KAGEROU』/斉藤智裕が
思い起こされている人もいる…らしい。らしいというのは、自分はまったくそれではなく、
「バーナード嬢曰く。」を読んで気になったからである。
さっそく図書館で借りてきたものの、時間が経つうちに読みたい欲が冷めてきて
どーせつまんないんだろうなと思って数ページ読んでみたのだが、うーむ。
読み進めることができないというほどではなくそこそこのつまらなさ。
むしろ、どんなに重い状況にあっても二十歳の青年のような若々しいしゃべり方をし、
自殺に失敗した直後に「すいません。吸いません、なんちゃって」といった
エターナルフォースブリザードなオヤジギャグを放つ四十歳の主人公に
助けられて、重い話のはずなのに突然トンチキに走る空疎な話をさくさくと読める。
これだけ話が重いはずなのにさらっと読めるというのはある意味凄いのかもしれない。
脳は移植できないと言っていたはずなのにそれをさらっと覆すLast Chapterにも
大変度肝を抜かれ、これは矛盾が許されるファンタジーだ、と最後に示すあたり良心的である。
つい「KAGEROU」に釣られて無理な言い回しをしてしまった。
ただ、これが大賞受賞してしまったことが悲劇ですな……
文庫化されていないのがせつないところである。
本人が望んだのかは知らないが、作られたピークというのはむなしいものである。
そして読み終えた後に思ったのは、これを読んで
必死に背伸びをする高校生のようにどこまでも不器用でひたむきな小説なのだから!!!
…胸をかきむしりたくなるような共感を覚えた小説は久しぶりだったよ
と登場人物に言わせられる施川ユウキのものづくりをしている人間から見た
独特の感性と着眼点とにもう一度驚かされたのであった。
そういう意味では「KAGEROU」を読んでよかった。内容?忘れた。KAGEROUだもん。
火花も3年後ぐらいに冷静な気持ちで読んでみたい。